3月22日朝日新聞夕刊の一面に、これまで本ブログでも書いてきた「個別避難計画」に関する記事が掲載されている。
岩手県では、要支援者合計9万3670人のうち、作成された個別避難計画は1万9047人分(2023年5月時点)で、作成率は20.3%となっている。宮城県では、要支援者合計6万4348人のうち、作成された個別避難計画は7862人分(2024年4月1日時点)で、作成率は12.2%となっている。
その背景には、東日本大震災で、救助に向かった人が犠牲になったケースがあり、要支援者自身も「巻き込みたくない」という思いがあるからのようだ。
三陸には「津波てんでんこ」という言葉があるそうだ。これは、「まず自分の命を守るために、それぞれで逃げろ」という教えだという。個別避難計画があることによって、それができなくなる恐れがあるという。釜石市の防災危機管理課長は、「豪雨は予測可能でかなり前に避難できるが、津波は30分ほどで来る。個別避難計画になじまない。」と語る。
しかし、それでも個別避難計画を作成すべきだ。そして、鍵屋一先生の話によると、1人の要支援者に対して、複数名の支援者を決めておくことが大切だという。まずは、「逃げろ!」という声を掛け合うことが大切だ。そして、複数名の支援者のうち一番近い人が中心になって、避難を支援する。
記事には、視覚障害者と聴覚障害者が登場した。視覚障害者の方は、弱視の妹が手をひいてくれて、たまたま会った近所の人に誘導してもらって避難場所に辿り着いたという。聴覚障害者の方は、同じく聴覚障害のある妻と共に、車で駆けつけた兄が迎えにきてくれて、逃げることができたという。
どちらも家族だのみ。それではダメだ。視覚障害の方は一緒に住んでいた妹さんではあるが、聴覚障害者の方のように、近くに住む人ではなく、家族頼みになってしまっているから、避難が遅れ、犠牲者も出たのではないか。
まず、個別避難計画を早急に作成する。そして、それをもとに本気の訓練をする。その訓練の目的は、一つに個別避難計画が実行できるかの確認。もう一つは、個別避難計画が実行できない、想定外の状況になった時の対応を検討し、実行する訓練である。矛盾するようだが、個別避難計画が計画通りに行くとは限らない。だからこそ、実行できなかった時のことを想定した訓練によって確認することが必要なのだ。
行政や何より要支援者、支援者それぞれが、そこまで真剣に捉えて検討、訓練する意思がなければ、個別避難計画は「なじまない」で終わりになる。それで、どう命を守るというのか。
とにかく、まずは「個別避難計画」の作成が大きな一歩となる。
これをまず作成することから始めるべきだ。
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