ガザの停戦が合意された。
カタール政府、エジプト政府、アメリカ政府の努力を賞賛したい。
しかし、長かった。長すぎた。その間に、多くの人が死に、傷ついた。46600人を超える死者。
自らの民族が受けたジェノサイドを、他の民族には平気で行えるという人間の悲劇を目撃した。
薄氷を踏むような合意ではあるが、双方にとって、この合意をなんとか存続させなければならない時期に来ているのだろう。
イスラエルも人質解放を最優先に求める人質とその家族を支援する勢力のうねり、徴兵による社会の損失も大きいだろう。ただし、イスラエルが合意内容を閣議決定した後、ネタニヤフ政権がどうなるのか?政権内極右勢力が政権離脱するのか、注目したい。離脱しかなった場合、何かが起きうると思っている。
ハマスも、イスラエルに対する武力闘争を標榜する政治組織だが、ガザ市民がハマスを支援する理由は、そこだけにあるのではない。あの「天井のない監獄」と言われるガザにおいて、人々にとっての必須のもの、食料、医療、教育といったものを汚職なく、もたらしてくれたことへの信頼が大きいだろう。しかし、ハマスの行動の報復として、ガザ地区市民は辛酸をなめた。ハマスへの支持も厳しくなってきているのだろう。
トランプ次期大統領の「地獄をみる」という発言は、イスラエルにこそ効いても、ハマスには効くわけがない。ただし、バイデン政権高官が「トランプ次期政権メンバーの協力があったから」という発言の真意は、トランプ次期大統領の脅迫的発言ではなく、今回の交渉の合意について、アメリカの政権が変わっても、合意内容が存続することについて確約したことが、双方の当事者にとって大きかったと思う。
バイデン大統領は、パレスチナ国家樹立による二カ国共存を目指していた。今回は、三段階に分けて休戦・人質解放等の対処が実施されることになっている。その第三段階において、バイデン政権は、パレスチナ国家に向けた準備を進めるつもりだったと聞いている。しかし、トランプ次期政権では、どうなるか。すでに世界ではパレスチナ国家を承認する動きがあるが、日本はもとより米国も承認していない。私は、二国家共存しか、この地がまずは「落ち着く」方策はないと思っている。パレスチナ国家承認、二国家共存が実現することを切に希望している。
20年前くらいだったか?、当時UNHCR職員だった友人を訪ねて、ヨルダン、イスラエル、パレスチナ自治区を旅した。朝、モスクから、朝の礼拝アザーンが流れてくる。その美しい調べ。その時も、新聞がテルアビブでバス爆破テロが起きたことを報じていたが、イェルサレムは、静かで落ち着いていた。
ある書店に入ると、2名の店員はパレスチナ人の男性だった。毎日、お店に来るのに2時間以上はかかるのだという。検問所では、爆発物をもっていないことを証明するために、シャツをめくりあげ、腹をだして歩くのだと教えてくれた。
キリスト生誕の日に、ベツレヘムの生誕教会でミサに参加できた。その時の、信者の皆さんのキリストと魂を共にする姿、生誕教会の時間の重さ、その夜の静けさ。いろんなことが思い浮かぶ。聖墳墓教会、嘆きの壁、ホロコースト・ミュージアム、そこを訪れる若者たちの姿、死海、野菜豊富な料理・・・本当にいろいろな刺激を受けた旅だった。
今、その地がズタズタのズタズタにされ、荒廃した土地と化している。まずは人道援助。十分な人道援助を。飢え、死ぬことのない状態を。子どもたちのための学校の再建も急いでほしい。各国がすでに再建の支援に動き出している。日本は、あまり国民には知られていないが、これまでずっとパレスチナを支援してきた。今回、UNRWAへの拠出金を停止してしまったが、これまでの歩みに誇りをもって、今後もパレスチナ、ガザ地区への支援を継続してほしい。
現在、国際司法裁判所が、南アフリカ政府からの申し立てを受け、イスラエル政府のガザ地区への行為がジェノサイドであるかどうかの審議が進められている。早期に、その結論を判断してほしい。国際司法裁判所は、双方の指導者の戦争責任を問い、逮捕状を出している。ICC条約締結国は、その容疑者が入国したら、速やかに逮捕し、裁判に付してほしい。
先日、アメリカ政府がスーダン政府の行為をジェノサイドと認定したと報道していた。その際に、私の敬愛するジャーナリストの一人が、「スーダン政府がジェノサイドなら、なぜイスラエル政府によるガザ地区への行為はジェノサイドとして認められないのか?」と質問した。素晴らしい。ジャーナリズムが生きている。それに対するアメリカ政府高官の回答は、国際司法裁判所を引き合いに出したものの、政府としての回答にはなっていなかった。
ダブル・スタンダードは許されない。とだけ、指摘しておきたい。
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