5月23日付朝日新聞に、2025年6月より、子どもの一時保護について、裁判所がその必要性を判断する「司法審査」が始まることを報道しているので、共有したい。
先日、子どもを一時保護された母親が、子どもが保護されている乳児院の職員を殺害する事件が起きた。このことについては、当ブログで書いたので、ここでは詳細を述べない。

この事件は、子どもの一時保護が、どれだけ加害者(保護者)にとって厳しいものなのか、それゆえ対応する職員にとっても厳しいものなのか、が理解できる。
一時保護とは?
家庭で虐待を受けている恐れがあるなどの理由で、児童相談所が緊急で、18歳未満の子どもを保護することをいう。
司法審査とは?
親が一時保護に同意しない場合、裁判所が審査することによって、より適正な判断を行うことを目的としている。
記事は指摘していなかったが、裁判所が関わることによって、一時保護に同意しない親などに対して、より強制的に、保護を実施できることを目的としているのだろう。
児童相談所が、子どもを保護してから7日以内か、一時保護する前に、裁判所に一時保護状を請求する。子どもの親権者に一時保護が必要である理由を説明し、子どもや親権者の意見を聞いたうえで、裁判所に提供する資料を作ることになる。
裁判所は、これらをもとに一時保護の必要性について判断し、一時保護状を出す。
子どもの命の危険が生じることが想定されるような場合に裁判所が却下した場合、児童相談所は取り消し請求ができる。
こども家庭庁の試行事業では、裁判所への資料準備など、司法審査にかかる業務は、1ケースについて中央値で10時間47分かかったという。このような負担が、ただでさえ忙しい職員への圧迫になることが、大変懸念される。
司法審査が行われるのは、一時保護に対して、保護者が同意しない場合に限られるが、件数としては、少なくないのではないかと思う。職員への負担について、しっかりと見守る必要があるだろう。
私が、某県の中央児童相談所を視察した際、ある男の子が保護されてきた。その際に、所長がその子に、「今晩ここにいる?」と穏やかに聞くと、子どもは「うん」と、言いにくそうに、しかし明確に答えていたことを思い出す。この子の体には、親からの暴力の跡を見ることができた。一時保護の方針が保護者に受け入れられたのだろう。その子は、少なくとも、その晩は、児相で保護された。
しかし、一時保護を受け入れられない保護者も少なくない。なので、児童相談所の判断を明確に後押しし、確実に必要な一時保護が可能にできるための司法審査は、重要だろう。
大切なのは、何より、子どもの安全だ。
それを可能にするために、強制力を高めることには賛成だが、繰り返すが、職員の負担が大きくならないよう、児童相談所の職員の増員等を実現するなど、現場への支援を確実に実施する必要があるだろう。
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