稲葉賀惠さんと原由美子さんが紡いだ本物の重さ。2025.02.02公開

女性たち

「yoshie inaba」という女性服のブランドをご存知だろうか?

実は、このブランド、2024年の秋冬物を最後として、2025年2月までにクローズすることが発表されている。長年、このブランドを主宰してきたのは、稲葉賀惠さん。シンプルで、飽きのこない、定番の服を女性たちのためにつくり続けてきた人だ。

私もたくさんではないけれど、子どもを産む前の体型の頃(あたた・・・)、よくMOGAやyoshie inabaの洋服を着て、仕事をしていた。布の質も仕立てもよく、着心地がいい。「いつか着れるかも」という淡い期待(断捨離の達人たちには絶対にあり得ない!という、この一言)をもって、今でも何枚かのスーツを保管している。

まだ30代なりたての頃だっただろうか、初めて「yoshie inaba」の白いシャツを購入し、腕を通した時に感じた、何か大人の女性に近づいたかのような嬉しさを今でも覚えている。白いシャツは、残念ながら汚れが目立ってしまったが、その後も何枚か、同じ型の白シャツを着続けた。

先日、たまたま手にした「婦人画報」2025年2月号で、スタイリストの原由美子さんが稲葉賀惠さんについて、エッセイを寄せていた。

そこには、原由美子さんから稲葉賀恵さんに向けて、「自分のスタイルを貫いた人」とあった。

なんという褒め言葉だろう!

まだ10代の頃だっただろうか、従姉妹が見せてくれたananという雑誌を支えていたのが、スタイリストの原由美子さん。本当に眩しい紙面だった。原さんは、私の大学の先輩でもあり、その日本人離れしたセンスの持ち主は、憧れの人だった。私から見ると、原由美子さんもまた「自分のスタイルを貫いた人」なのだ。

そんな原由美子さんが、稲葉賀恵さんの長年の仕事を称して「自分のスタイルを貫いた人」と語る時、その言葉は、言葉以上の重みと価値をもつと感じた。そして、決して平坦でも簡単でもなかったであろう、稲葉さんの長年のブランド経営と作品づくりに対する、原さんの心からの敬意と労いが感じられて、本当に素晴らしい!と思った。この一言に、ファッションの世界で活躍してきた、二人の女性の営みを感じるとともに、そこには、そう簡単には出すことができない、本物の重みがあった。

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