流山市でも。嬰児殺しをなくすために。その1 2024.05.02公開公開

女性たち

今年も、嬰児殺しの事件が続いている。事件が報道されると、いつも母親が攻撃される。「母親が殺すとはどういうことだ?」「犯人がふしだらだったんだ」。しかし、赤ちゃんは、女性だけで産むことはできない。にもかかわらず、女性ばかりが攻撃される。母親を攻撃するだけで嬰児殺しはなくなるのか?本当に赤ちゃんの命を救うためには、何が必要なのか?国の動きが鈍い中で、私たちの生活に最も近い自治体こそが、孤立し、どうしていいかわからなくなっている妊婦さんを支援する存在になるべきではないか。

そんな中、今年3月末、熊本市の慈恵病院に続いて、東京都墨田区の賛育会病院が内密出産や親が育てられない子を匿名で預かる「いのちのバスケット」を導入した。そして、この1ヶ月の間に、いのちのバスケットに預けられたケースがあったことが明らかになった。

NHK: https://www3.nhk.or.jp/news/html/20250501/k10014793891000.html

赤ちゃんが保護されて、本当によかった。

日本では、嬰児殺しにつながる可能性の高い、孤立出産の危険にある女性たちへの支援が、決定的に無い。そんな中で、熊本市の慈恵病院が、様々な圧力を受けながらも、唯一の存在として、女性たちに呼びかけ、支援をし続けてきたというのが現状だ。日本で、嬰児殺しにつながるような孤立出産、内密出産に対する行政の支援や法制度が決定的に遅れている問題について、何回かに分けて考えてみたい。

私は、2023年の流山市長選挙の公約に、「みんなのサポートセンター」設立の公約を掲げた。ここは、ワンストップで、様々な問題を相談し、解決し、ケアを受けることができる場所にしたいという訴えだ。しっかりとした力のある専門家を配置する。また子どもたちは、生まれた時から、ここで検診を受け、遊び、相談し、保護される。いつもの慣れた場所で、相談し、保護され、ケアされることが大切だ。相談したり、保護される人にとって「怖くない場所」にしたい。

児童、高齢者、障害者、さまざまな人への虐待、DVの被害者とその子どもたちの保護とケアができる施設であるだけでなく、女性の健康の拠点にもしたい。育児に疲れたら、子どもたちがここで過ごせるようにできるし、長期入院のきょうだいがいる子どもたちもここで預かることができる。

それだけではない。子どものことが優先で、自分の身体のケアが後回しになってしまう女性たち。子どもたちを預け、健康診断を受けたり、体について学んだり、予防ケアをしたり。女性の健康は、女性特有の病気の早期発見など検診活動だけでなく、妊娠・出産に関わるさまざまな支援も必要だ。特に、様々な問題を抱えている女性たちを支援したい。

孤立出産であったり、内密出産(母親が自らの身元を明かさずに出産すること)を希望する女性たちは、様々な問題を抱えているという。幼い時に養育者との愛着形成がうまくいかず、対人関係などの問題を抱える愛着障害など、様々な困難を抱えていることが多いようだ。

また親との関係に問題を抱えているケースも多いという。虐待、過干渉、厳格な親。そんな中で、誰にも相談できない環境に追い込まれている。そして、何がなんでも、身元を明かしたくない状況が生まれる。

慈恵病院で、内密出産で出産したいという女性が現れた際に、大きく注目された。この時、厚生労働大臣は、「現行法制下で、内密出産は違法ではない」と明言したが、法制化には、なぜか「慎重な検討が必要」としている。

2022年、厚生労働省と法務省は、「内密出産の手順や身元情報の保管に関するガイドライン」を公表したが、「妊婦が身元情報を明らかにして出産するのが大原則であり、推奨するものではない」という姿勢であり、現場で起きている現状に寄り添う内容にはなっていない。

子どもが生まれるということは、幸せなことであってほしいと多くの人が思うだろう。しかし、現実は、そうとは言えない状況があることを認めなくてはならない。父親が逃げていくケース。自分自身も妊娠を認めたくなくて時だけが経ってしまうケース。親の支援が得られないケース。どこに相談していいのかわからないケース。でも、確実に、命は、赤ちゃんは育っていく。

昔も、今も、そんな状況に置かれた女性たちが嬰児殺しをしていく。何も進歩していない。

それでいいのか?

行政が行なっている妊婦さんへの支援は、昨今、これでもか!というほど充実してきているのに、最も支援を必要としている妊婦さんが置き去りにされている。それが、今の日本の姿なのではないだろうか。国の考えが圧倒的に遅れている。保守的な団体に支援された政権が続いたために、現実に対応できてない。

繰り返すが、だからこそ、少なくとも、私たちの生活の最も身近にある自治体が、きちんと対応する準備、その対応能力、体制を整備すべきだというのが、私の考えだ。そして、市長など首長が腹を括って、自らの責任と権限で赤ちゃんを守るしか、今の日本で嬰児殺しを防ぐことはできない。または、将来的な児童虐待を防ぐことはできない。

明日は、憲法記念日なので、憲法について考えたいと思っているが、その後、何回かに分けて、内密出産、子どもたちの保護について考えてみたい。

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