ここまで3回にわたって、嬰児殺しをしないために、日本での現状やフランスでの取り組みについてまとめてきた。
匿名出産を望む人は、その方自身に、精神的に、肉体的に、虐待や愛着障害などによって孤立せざるを得ない状況があることが多いようだ。フランスでは、そのような孤立した妊婦となった女性たち自身が、自分で判断することができるよう支援するしくみができている。
1)サポートする専門家の育成
女性たちが「自分のための選択」ができるように支援する専門家が必要だ。医師、看護師、心理士、ソーシャルワーカーなど、偏見をもたず、自分で判断することをサポートすることは、簡単ではない。しかし、そういった大変な仕事を、日本では、ほとんど自発的な活動(ボランティア)に任せてきた。女性たちのサポートだけでなく、ソーシャルワーカーや心理士といった職業は、就職が難しく、サポートする方も精神的な負担が大きい仕事であるにも関わらず、不安定雇用であることが多い。これを変えたい!
このような専門家の「質」が、相談者の人生、命を変えることになっていまう。だからこそ、財政的難しいのであれば、東葛地域の自治体が力を合わせて、女性たちをケアできる人材を安定した形で雇用し、専門性や経験を積んでいただき、質の高い相談・支援業務が地域に根ざしておこなえることが必要だ。
2)匿名での相談が可能な体制
女性たちが安心して相談できるためには、どの自治体にあっても、匿名で相談できるような環境が確保されなければならないと思う。現在は、日本国内で、熊本の慈恵病院、墨田区の賛育会病院のみが対応している状態だ。国内で2病院って・・・これでいいはずはないし、この2病院を支援する体制を確実なものにしていく必要がある。
3)地域での協力体制
流山市内外で、匿名出産をはじめ、さまざまな出産を支援するためのネットワークをつくることが大切だ。日頃から、地域の中での勉強会やネットワークづくりを進め、行政が支援していく体制をつくっていく必要がある。
また相談者があちこちにたらい回しにされるのではなく、ワンストップですむ相談窓口が必要だ。相談することだけで心が折れてしまってはならない。そのためにも、流山市内に「みんなのサポートセンター」をつくり、相談者ではなく、専門家の方が動いて、支援をつなげていく体制をつくっていくことが必要だと思う。
4)法整備が必要
現在、匿名出産が違法ではないにしても、匿名出産にまつわるさまざまな体制と法整備が不十分だ。匿名出産にかかる費用の負担、出産後の支援体制、戸籍など子どもの権利に関わること、特に「出自を知る権利」など、長期にわたって必要となる様々なことが「個別対応」で済まされるのではなく、きちんと法整備をされた上で、保障する仕組みが日本に必要だ。
匿名出産を希望する人は、超マイノリティだ。そのような存在のための法整備は、いつも後回しにされがちだ。だからこそ、日本国内のあらゆる自治体が力を合わせて、他の自治体のことと考えるのではなく、自分たちの自治体で起きたことと捉えて、必要な法整備を国に働きかけることが必要だ。市長会、知事会が本気になって動いてほしい。
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