NHKプロジェクトX 観ながら、人の成長について考える。

子ども・子育て支援

2007年、私は連れ合いとトルコを旅していた。陶器が有名な街で購入したお皿。地元の人に「バスの中に忘れたんだ」と、何気なく伝えたら、なんと次の行き先でピックアップできるように手配してくれた。今でも、そのお皿をそんな思い出と共に使っている。私も連れ合いも忘れられない。トルコを堪能する旅は、もちろんボスフォラス海峡にも立ち寄る。海から舞い上がる強風は、アジアから、ヨーロッパから吹いてくる。その風の行方を思いながら、ボスフォラス海峡の、地球の広さを感じた。

同じ時、そのボスフォラス海峡に日本人の男性たちが、あるプロジェクトのために格闘しているなんて、思いもよらなかった。そのプロジェクトとは、トルコのボスフォラス海峡にトンネルをつくり、鉄道「マルマライ」を通すプロジェクト。トルコ人にとって150年来の夢をトルコ人と日本人の混合チームが実現したという。日本側のメンバーは大成建設の社員たち。11月30日のNHK「プロジェクトX」は、このボスフォラス海峡にトンネルを建設した人たちのストーリーだった。

観ていて思うことはいろいろあったけれど、ここでは一つだけ、ご紹介したい。それは、このプロジェクトの所長を務めた小山文男さんのこと。日本とトルコの習慣の違い、それをまとめ上げて、世界の大手ゼネコンが嫌がるような難しい仕事を貫徹した人だ。

印象的だったのは、彼の幼少期のこと。小さい頃、彼は「何をやっても遅い子」だったという。宿題も遅くまでかかる。ただし、遅くなってもちゃんとやったという。そんな「何をやっても遅かった子」が、この難解なプロジェクトを耐えに耐え、実現したのだ。

今の子どもたちは、早い時期からいろいろなことを始めて、なんでも早くと急かされ、早くから評価されていく気がしてならない。藤井聡太君や若くて素晴らしいピアニストなどなど、小さい頃から始めた道を極める若者たちをみると、親(私)もつい焦ってしまう。しかし、「何をやっても遅い子」だった小山さんは、人生は簡単には決まらないし、若くて認められるわけでもない、時間をかけて何かをやり遂げる人生もあるのだと教えてくれた。

小山さんの強さは、小さい頃から「何をやっても遅く」ても、最後まできちんと「やり遂げる子」だったということではないか。時間がかかっても最後まであきらめずに、何事も最後までやり遂げる。人生で養われた、その忍耐力こそが、この困難なプロジェクトを実現させたのだと思えた。

実は、うちの子も「何をやっても遅い子」。急かすことも多い。でも思い返してみると、宿題にしても何にしても、時間がかかっても毎日必ず最後までやってきたなぁと。そんなこと当たり前!と思っていたけれど、小山さんの人生に触れて、それって簡単なことじゃないんだと気づかされた。先生からそんな指摘はなくても(笑)、誰でもない、私こそが、そのことの大切さをちゃんとわかっていなければならなかった。うちの息子が小山さんのように、あの難解なトンネルつくるようになるなんて、とてもじゃない、言えないが(笑)、「何をやっても遅い子」であっても、その子の頑張り、日々の積み重ねの中で身につけていることが、いつか彼を助ける日が来てくれるといいなと、子育て半人前の母は願うだった。

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