トランプ大統領の理解に苦しむ施策が止まらない。日々、コロコロ決定が変わり、本来大統領というより、ビジネスマン、いや大人が知っているはずの知識をも持ち合わせていないとしか言いようのない低レベルな決定を次々と発している。中身がない人間に、これだけの権力を渡せば、このような惨劇が起きることはわかったことだ。
関税が注目されがちだが、それだけでなく様々な問題を引き起こしている。その一つが、ハーヴァード大学への圧力だ。知への冒涜だ。許せない。
反ユダヤ主義対策への不十分さを理由に、補助金を凍結。同大学の4分の1を占めるという「留学生の滞在資格について、他の大学に転出しなければ失う」とした。また「新たな留学生の認定も取り消す」という。
学生たちのこれまでの努力や学び、引いてはその将来を阻害する決定を出すトランプ大統領は、完全に大統領権限を逸脱している。現在、裁判所が一時差し止めを命じている。今後審理されるだろう。
いくつかのアメリカの有名大学の学長らが、反ユダヤ主義への対応を理由に辞任に追い込まれ、補助金の打ち切りをちらつかされて手折られている中、ハーバード大学は闘っている。心から応援したい。補助金の凍結は、世界各国に散らばる卒業生たちを中心に、あと3年、なんとか寄付等によって支えてほしい。覚悟が必要だ。
フランスでは、マクロン大統領が、トランプ大統領による圧政のために、アメリカの大学を辞する研究者たちの受け入れをすでに表明している。さすが!そして今、東京大学が、ハーバード大学で研究を継続できなくなった学生たちの受け入れを検討しているという。心から応援したい。このような動き、大変嬉しい。
すでに、この世界は、ハードとソフトの両パワーをもつ「大国」としてのアメリカ合衆国という存在を失っている。このことを日本も世界も、明確に理解すべきだろう。ヨーロッパは、すでに舵を切っている。そして、この日々コロコロ決定が変わり、一族の私腹を肥やすばかりの暴君に、世界全体で立ち向かう必要があるだろう。
5月24日の日経新聞「春秋」に鶴見俊輔氏のハーヴァード大学での話が掲載されている。彼は、日本で大変な問題児(本人が書いている)で、アメリカへと送られる。彼は確かに恵まれた人だ。1939年16歳でハーヴァード大学に入学。そして太平洋戦争が始まる。「敵性外国人」である鶴見は、捕らえられ留置される。ところが、ハーヴァード大学は、FBIが押収した彼の書きかけの論文を取り返し、彼に留置場で続きの論文を書かせたという。そして、授業には出られなかったが、試験官を留置場に派遣し、彼に「卒業証書」を授与している。
多分、このハーヴァード大学の行為の価値をトランプ大統領には理解できまい。しかし、私たちは、この大学の判断と行為は、大変に高貴なものとして称賛できるだろう。
今、権力を握るものが、自らの意に沿わない行動や自らの政権に批判的なものに対して、権力をもって、予算(金)をもって、学問の自由、思想の自由を根絶やしにし、黙らせようとする動きが、アメリカ合衆国にも、日本にも見られる状況であることに対して、私たちは深刻に受け止めなければならないと思う。
批判されることを恐れる政府、政治リーダーとは何者か?空っぽだからだ。
私は、現在進行している学術会議に関する政府の動きに対して、Xにこう記した。
批判を恐れるなら、政治家を辞めるべき。
批判される必要のない政治を行うことこそ、政権のつとめ。
批判を潰そうとするのは幼稚な証拠。
誰だって、批判されるのは面白くない。しかし、批判に耐えられない、説明に耐えられないもの(法案)を出してくることが、そもそも間違いなのだ。本当に必要なことは、リーダーとして、それ(法案)を裏付ける理由への確かな確信がなくてはならない。
それは流山市の市長であろうと、日本国の総理大臣であろうと、アメリカの大統領であろうと同じだ。
それができているのか?私たち市民はしっかりと見て、判断し、批判し、適任でないなら変えていかなければならない。明確に説明できない、批判を恐れて説明を逃げる姿勢は、リーダーではない。
今、アメリカで起きていることを眺めながら、この国が4年後も世界の主要国であり続けられるとしたら、アメリカの司法がどれだけ論理を磨きに磨き、これまで人類が、アメリカ国民が積み重ねてきた憲法と判例を形づくる価値の上にたち、この暴走する権力を批判し、先達が勝ち取ってきた人権や法理を守り抜くことができるかにかかっていると思う。連邦だけでなく、州における様々な裁判官たちの奮闘を心から期待したい。
アメリカという国は、多様性と矛盾に満ちた国だ。だからこそのダイナミズムをもっている。この荒ぶる暴政への抵抗の中に、新たな価値への再発見と団結がもたらされることを期待したい。この国には、それを担える力をもつ人たちがいると思うから。
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