流山にて、人の尊厳を守る警察官や弁護士たちの姿に打たれる。2025.05.25公開

憲法

今日のNHK「新・プロジェクトX」は、感動したっ!!!

「ヤミ金融をを撲滅せよ 大阪・雑草弁護士たちの戦い」

大阪・八尾市で、夫婦と妻の兄の3人の心中事件が起きた。心中の理由は、ヤミ金融。亡くなった女性(妻)佳代子さんは、障害がある兄の世話をするためフルタイムで働けず、内職などをして生活を支えた。夫も、交通事故で働けなくなった。どうしようもなくなって、ヤミ金からお金を借りた。待っていたのは地獄だった。

警察に相談に行き、対応した警察官が、親身になって聴取し、食事を食べさせ、励ました。しかし、その3日後、妻と夫、妻の兄が心中した。その対応した警察官、城代さんたちの捜査によって、時効の2ヶ月前に犯人が捕まる。執念が実った。

警察に相談してから3日間の間に、団地の他の住民に脅迫電話をされ、佳代子さんたちは、もう人様に迷惑はかけられない。そう思って、大好きだったカレーを最後に3人で食べて心中したのだ。

犯人は逮捕された。しかし、当時、ヤミ金融を罰する法律が整備されていない中、犯人たちは、刑事事件では軽い刑で終わった。そこで、妻の兄姉が原告となって民事訴訟を起こす。証拠の収集が難しい中、警察の調書なども丁寧に読み込んでいく。そんな中で、佳代子さんの遺書が決め手となり、民事訴訟に勝訴。国会での法改正も行われ、ヤミ金融が撲滅されていった。

佳代子さんの遺書の一部を読んでみても、真面目で、きちんとした佳代子さんの姿が見える。真面目に生きているものが食い物にされて、命を奪われる。佳代子さんは福祉事務所にも遺書を残していた。福祉事務所の人も支えたけれど、支えきれなかったのだろう。しかし、真面目に生きていて、どうしようもない時に、なんとか生きていけるように「人々を支えられる行政」でなければならないと強く思う。行政が行政としての本来の力を発揮するためには、首長が公正に、正義をもって、それを支える判断ができなければならない時があると思っている。だからこそ、首長がどこを向いて仕事をしているか、が重要になるのだ。これから物価が上がり、生活が苦しくなる中で、そのような首長の資質の重みはより大きくなるのではないだろうか。

佳代子さんは、遺書の中で「死にたくないと涙が止まりません」と語っている。この裁判を闘った植田弁護士の言葉。

「あの3人の皆さんの死の迎え方、人様にこれ以上迷惑はかけられないよねみたいな感じで命の幕引きみたいな感じでやっていく。真面目に生きていれば、命を真面目にやっていることでずっと生かさしてもらえるのがこの世の中のはずですよね。でも一生懸命に生きていながらそれを潰したのは誰なのかということになると、八尾ヤミ金では、その脅迫者たち、すなわち金を使って相手を徹底的に脅しあげて金を奪い取っているやつ、ないしこの人たちを生かす場を与えられなかったこの社会かも。そんな社会はあってはならんよねということですよね。」

心に響く。その後、厳罰化の形での法改正、最高裁の判決などがあり、ヤミ金融問題が大きく前進した。しかし、ルフィ事件など、今もなお、法をかいくぐったような金融事件が跡を絶たない。

弁護士たちの、弁護士としての矜持を感じる。弁護士が、捜査資料などを読みに読んで、証拠をあぶり出し、被害者の無念を晴らすべく、また次の被害者を生まないために、裁判で勝ち取る。

警察官の城代さんは、ずっと佳代子さんの遺書を引き出しに入れていたそうだ。彼女の真面目さ、彼女の無念さを受けて、真面目に、愚直に、粘り強く、犯人を追い込む警察官たちがいた。そして、それを丁寧に、証拠を集め、立証し、被告の有罪を立証した弁護士たち。そして、その非情さを受け止め、問題を示し、判決を下した裁判官たち。佳代子さんだけでなく、ヤミ金によって殺されていった無念の死を受けて、法改正を進めた官僚や国会議員たち。

そういった真面目に人の尊厳を守ろうとする人たちがいて、この社会が形づけられていることを実感した。弁護士がどんどん増えて、弁護士の不祥事も多くなっている今、改めて、法の実行者としての弁護士の矜持を見た気がした。楽で報酬の高い仕事に目が向く昨今、仕事とはその人の生き様そのものであり、何を成し遂げたのか、そのためにどれだけ努力できたのか、こそが、人の存在を支え、人の幸せなのではないかと思った。

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