流山から再び。社会の基盤である法の支配が保障される日本社会・国際社会を!

司法

8月27日、オランダのハーグで、セルビア人勢力の元将軍、悪名高いスレブレニツアの虐殺を指揮したラトコ・ムラジッチ受刑者が、国連刑務所病院で死亡した。旧ユーゴ特別法廷で、ジェノサイドの首謀者として終身刑を言い渡された人物だ。刑務所で人生を終えた。

先日、私は当ブログで、アメリカが赤根智子国際刑事裁判所(ICC)所長たちに制裁発動をし、ICCを廃止するための行動を起こすと発表したことに抗議し、ICCという国際裁判所を守ることが大切だと訴えた。この動きに対して、高市首相は、何のメッセージもない発言だったということも批判した。

その後、署名活動で8万人を超える賛同があったとのこと。大変心強い。これは、この国が憲法9条を含む日本国憲法を戴く国であること無関係ではないと思う。「軍事力ではなく、法の支配と交渉による(国際)問題の解決を目指す国であろうとすることが重要であるという価値観」を共有する国民・市民だからだと思う。

一方、私は日本人のICC所長を守ろうとしない高市首相の姿勢は「保守」ではないという意見に接し驚いている。

確かに、ICCという国際社会において重要な役割を果たす職務に、日本人が選出され力を発揮していることは、極めて誇らしいことだ。私もそう言っている。しかし、この問題は、ICC所長が日本人であることとは全く関係ない。日本を含む国際社会にとってICCの果たす役割は極めて重要であり、これを存続し、これを支え、その実効力を高めることが、日本にとっての大きな国際貢献である。

夏休みも終わりに近づきバタバタしているため(笑)、きちんとフォローできていないが、赤根智子ICC所長がオンライン記者会見で発言したという。

ここのところ、日本の検察は不祥事が続いているが、それに対して組織的な改革・再生を果たせないでいる。しかし、厳しい日本の検察社会の中で、赤根氏は生きてきた人である。生半可な存在ではない。様々な不利益があっても、彼女にとって大きな問題ではない。特に、日本政府ではなく、オランダ政府が非常に大きな支援を申し出てくれている。心強い。

「こうした私個人に対する様々な不合理な不便さ、あるいは脅威については最初から予期できていたことであり、それによって私の裁判業務に対する向き合い方が変わることはありませんし、権威のために押しつぶされるようなことはありません。」

「ICCは決して負けません。正義は常にこれと対極にあるものに優越する、いや、優越しなければならない。Justice will and should prevail.」

「重大な国際犯罪の被害者にとって、ICCはいわば最後の希望でもあります。」

クーーー。さすが赤根所長。そのとーーーーーりだ!

その上で、赤根所長が日本政府に求めているのは、大きく2点。

1)日本政府がジェノサイド条約に加盟し、世界で起きた重大な犯罪を日本でも訴追できる法的な制度を構築し、ローマ規程に明確に示されている互換性の原則に基づいて、力を発揮できるようにすること。

2)アメリカの圧力によって、ICCから離脱する国がないように説得し、共に頑張ること。

前回ブログで指摘した通り、赤根所長は2)を最も恐れていると思うし、そこにこそ日本政府が外交力を発揮してほしいと願っていると思う。

以前NHKが赤根所長のドキュメンタリーを放送したことがある。私が最も印象的だったのは、離脱しようとしたモンゴルと交渉し、その離脱を食い止めたことだった。

ご存知の通り、ICCはプーチン大統領に逮捕状を発行している。赤根所長も、この判決の審議に関係しているため、ロシアは赤根所長たちを正式な裁判なく逮捕状を発行している。

以前、ICCから逮捕状を発行されているプーチンが南アフリカの会議(だったと記憶している)に参加するかが注目された。南アフリカはICCの加盟国。プーチン大統領が入国すれば、逮捕できる。注目されたが、最終的にプーチン大統領は南アフリカを訪れなかった。不逮捕が保証されなかったのだろう。

その後、プーチン大統領はモンゴルを訪問した。モンゴルもICC加盟国。私を含めた多くの人々が、逮捕を期待した。しかし、ロシアとモンゴルは、経済的にも政治的にも、極めて重要な関係にある。すでに話はついている。プーチン大統領は、国際社会に挑むように、ニヤニヤしながら飛行機から降り立った。モンゴルは、ICCからの脱退を申し出た。あのプーチン大統領の姿を見ながら、私は本当に悔しかった。しかしそれでも、赤根所長はモンゴルを説得し、ICCからの離脱を防いだ。非常に印象的だった。

赤根所長は「確かに様々な(ICCへの)批判があり、私たちもICCが完璧な組織であるとか、世界の重大な犯罪を全てICCが裁けるとは思っていない。だからこそ、補完性の原則、それから締約国の協力ということを前提に成り立つ裁判所だと言っています。」と語っている。

その通りだ。

国際機関の一つであるICCは、まだまだ完成とは言えないし、実効性を高める必要がある。それこそが、日本を含む、加盟国の取り組むべき大仕事だ。完璧ではないからといって、ICCを無くすことはあり得ない。

ICCのない国際社会に戻ることはできないのだ。

最後に、赤根所長が日本の皆さんに伝えた言葉の一つをご紹介したい。

「世界における法の支配の危機っていうのは、世界だけで済まされないかもわからない。日本の国内にも次第にそうした空気、つまり力による正義の方が手っ取り早くていいのだから、強い国に従っていればいいという方向に行かないか。・・・そうした司法制度の運用、どういうふうになされているか、市民の側からも常にチェックしてですね、これが円滑に、かつ、法の目的に従って行われているかということを見ていっていただきたい。」

トランプ大統領の様々な法を逸脱する行為について、日本人であっても、国際社会の市民の1人として「判断する」必要がある。また、日本の検察の腐敗をどう改革していくのかをはじめ、日本社会で起きていることについてもきちんと批判し、改革と再生を求めるべきだと言っているように思う。もちろん、再審制度の改正はじめ、様々な問題がある。元検事ヒカリ氏(仮名)の事件は、話にならない大問題だ。検察は、第三者委員会を設置して徹底的に膿を出し、再生してほしい。

私たちにとって、法というものが、それを成立させる国会(立法)、それを運用する行政、それを適用する司法というそれぞれ三権が、市民から信頼されるものであることによって、その権力を与えられ、執行される社会をつくっていくことが重要だ。そして、その執行は批判に耐えうるものでなくてはならない。

今、三権、そして「自治体」に至るまで、その執行において、市民の信頼を裏切る行為が続いている。そのような行為は批判され、改善され、「信頼を回復される」必要がある。

法の支配は、国際社会だけではなく、日本社会においても重要な基盤であるからだ。

番外編:

赤根所長

「いろいろアタックされることには強いですけれども、こういう温かい心にはちょっとほろっとしてしまってですね。うちではそういう意味で号泣してしまったこともあります。」

と発言。彼女がどれだけ厳しい世界で生きてきたか。それによって、彼女がどれだけ強く鍛えられてきたか。そして、その芯にある、彼女の人間性。それが現れた発言だった。

トランプ大統領に言っておきたい。

日本女性の強さを見くびんなよっ。

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